事業計画を立てる

アパート・賃貸マンション経営を成功させるためには、長期的な視点で「収支計画」を立てる必要があります。事業計画の中でも、特に重要な部分となりますので、事前にしっかりとチェックすることが大切です。
ここでは、「収支計画」の内容や、立案する際のポイントをご紹介します。

「収支計画」の内容

「収支計画」を立てる際には、策定した「事業計画」が採算に合うかどうかを確認することが大切です。建設する建物の規模や家賃設定などの項目について、現実的なものかどうかを吟味した上で、収支計画を立案しましょう。

収支計画の内容

「収支計画」では、収入から支出を差し引いて、どれぐらいの収益を得られるかを算出します。
具体的な方法としては、家賃・礼金・共益費・駐車場料金など、アパート・賃貸マンション経営で得られる金額を「収入」に計上し、借入金の返済額や税金(固定資産税や都市計画税)、火災保険料・維持管理費などの必要経費を「支出」に計上します。このとき、年間の「収入」の合計額が「支出」の合計額よりも多い場合は、収益を得られます。
反対に、「収入」の合計額が「支出」より少ない場合には、赤字となり、採算が取れなくなってしまいますので、事業計画を見直す必要が出てきます。
なお、収入と支出についての詳細の項目は、「2.大家さんはまずこれを知っておこう『アパート・賃貸マンションの収入と支出を知る』」をご参照下さい。

収入−支出=収益

「収支計画書」を作成する

アパート・賃貸マンション経営における主な収入や支出を把握したら、続いて「収支計画書」を作成します。「収支計画書」は、家賃などによる「収入」と、借入金返済額や必要経費といった「支出」、収入から支出を差し引いた「利益」、建物の修繕に必要な「修繕積立金」などを年単位で表にまとめたものです。
作成の手順は、次のようになります。

1.収入を算出する 2.借入金返済額を算出する 3.必要経費を算出する 4.収支計画書を作成する

①収入を算出する際のポイント

収入を見積もる際には、「家賃」や「入居率」などの賃貸条件の設定がポイントとなります。

  • 家賃の設定
    家賃設定は、「家賃を決める」を参考に行ないましょう。その際にはなるべく周辺地域の築5年以内の物件と同程度になるように設定すると良いでしょう。
    また、建物の経年劣化により、家賃を下げざるを得ない場合も想定されるため、中・長期的には、新築時より収入が低下することを考慮する必要があります。
  • 入居率の設定
    入居率の設定は、収支計画に大きな影響を与えます。入居率を100%に設定すれば、当然高い利回りで収支を出すことが可能ですが、入居率は年数の経過と共に低くなるのが一般的です。逆に、空室率を高く見積もり過ぎても収支計画が成り立ちません。
    空室のリスク対策をきちんと考えた上で設定しましょう。
家賃と入居率の設定がポイントです!

②借入金返済額を算出する際のポイント

借入金返済額は、金利の種類、返済方法などによって異なります。借入金返済額を算出する際には、選択した金利の種類、返済方法などを金融機関に確認した上で行ないましょう。さらに算出後は、家賃収入からの返済が可能か、返済計画にゆとりがあるかどうかを、きちんとチェックすることが大切です。

  • 金利の種類を確認する
    アパートローンの金利には、一定期間金利が固定される「固定金利」と、半年に1回、金利が変動する「変動金利」の2種類があり、借入時にいずれかを選択します。
    それぞれのメリット、デメリットを踏まえた上で、どちらにするかを選択しましょう。詳しくは、「資金計画を立てる」でご確認下さい。
  • 返済方法を確認する
    アパートローンの返済方法には、元金と利息の合計金額が毎月一定である「元利均等返済」と、元金の返済金額が一定である「元金均等返済」などがあり、どちらを選択するかによって年間の返済金額が異なります。
    返済方法はそれぞれの特性を理解した上で、事業の目的に合わせて選択しましょう。
借入金の返済計画にゆとりがあるかチェックしましょう!

③必要経費を算出する際のポイント

必要経費とは、アパート・賃貸マンション経営を行なう際に直接かかった費用、及びその年に生じた一般管理費のことで、主に次のようなものがあります。

租税公課 建物や敷地にかかる固定資産税、都市計画税、事業税などの税金、及び不動産取得税、登録免許税 など
火災保険料 建物にかける火災保険料(地震保険料を含む)
修繕費 アパート・賃貸マンション内外の修繕費
減価償却費 建物や附帯設備、構築物などの減価償却費
借入金の利息 金融機関からの借入金に対する支払利息
地代 土地を借りてアパートを建てた場合に、地主に払う地代
専従者給与 大規模にアパート経営をしている場合に、管理人(親族)に支払う給料
水道光熱費 共用部分の水道代・電気代
広告宣伝費 入居者募集にかかる広告・宣伝のための費用
管理費 不動産業者に建物の管理を委託している場合に、管理会社に支払う費用
雑費 清掃代や消耗品費 など

④「収支計画書」を作成する際のポイント

収入や支出の概算が把握できたら、続いて「収支計画書」を作成します。「収支計画書」は、およそ次のようなフォーマットで作成され、作成する際のポイントは、以下のようになります。

「減価償却費」を活用した所得税の減税

収支計画を立てるに当たって考慮しておきたいのが、「税法上の所得」は実際の現金収支とは異なるという点です。実際の現金収支では、家賃や礼金などによる年間収入から、借入金返済額、及び実質経費を差し引いたものが収益となります。
これに対して「税法上の所得」では、年間収入から、実質経費と減価償却費、専従者給与といった、“税務上の必要経費”を差し引いたものが「不動産所得」となります。所得税は、この「不動産所得」をもとに計算されるため、いかに税務上の必要経費を増やし、課税対象となる「不動産所得」を減らすかが重要なポイントとなります。

減価償却費とは?

税務上の所得計算では、アパート・賃貸マンションが経年劣化により損耗する減価部分を費用化する「減価償却費」が、必要経費として認められています。減価償却費は、建築費を耐用年数(構造・用途により、年数が定められている)毎の経費に計上するというものです。この「減価償却費」は、アパート・賃貸マンション経営による所得税を低減する上で、きわめて重要となります。
なお、減価償却の対象となるものは、次のようなものになります。

    定額法 定率法
建物 本体建物 ×
建物付属設備 本体建物から取り外せない設備(電気・ガス設備・エレベーターなど)
構築物 本体建物に付着していない築造物(フェンス・舗装・植栽など)
器具備品 本体建物に付着せず、単独で使用できる備品(エアコン・消火器・物置など)

定額法と定率法とは?

減価償却費の計算方法には、「定額法」と「定率法」があります。「定額法」とは、毎年一定額の償却費を計上する方法です。一方「定率法」は、固定資産の耐用期間を通して、毎年一定の割合の償却費を計上する方法で、返済当初の償却費が多く、年を経るにしたがって少なくなるのが特徴です。最終的な償却費の累計額はどちらも同じですが、定額法に定率法を併用して早期に減価償却費を多く設定した方が、当初の不動産所得を減少させることができ、所得税の軽減につながります。
なお、「定額法」と「定率法」によって減価償却費を算出する際には、次の計算式を用います。また、未償却残高の推移は、下記の通りとなります。

  • ●未償却残高の推移(定額法・定率法)
    未償却残高の推移(定額法・定率法)
  • ●減価償却資産の償却率
    耐用
    年数
    定額法
    による
    償却率
    定率法
    による
    償却率
    2 0.500 1.000
    3 0.333 0.833
    4 0.250 0.625
    5 0.200 0.500
    6 0.166 0.416
    7 0.142 0.357
    8 0.125 0.312
    9 0.111 0.277
    10 0.100 0.250
    11 0.090 0.227
    12 0.830 0.208
    13 0.760 0.192
    14 0.710 0.179
    15 0.066 0.167
    16 0.062 0.156
    17 0.058 0.147
    18 0.055 0.139
    19 0.052 0.132
    20 0.050 0.125
    21 0.048 0.119
    22 0.046 0.114
    23 0.044 0.109
    24 0.042 0.104
    25 0.040 0.100
    26 0.039 0.096
    耐用
    年数
    定額法
    による
    償却率
    定率法
    による
    償却率
    27 0.037  
    28 0.036  
    29 0.035  
    30 0.034  
    31 0.033  
    32 0.032  
    33 0.031  
    34 0.030  
    35 0.029  
    36 0.028  
    37 0.027  
    38 0.026 1/n×2.5
    39 0.025  
    40 0.024  
    41 0.024  
    42 0.023  
    43 0.023  
    44 0.023  
    45 0.023  
    46 0.023  
    47 0.022  
    48 0.021  
    49 0.021  
    50 0.020  

    ※n=耐用年数(小数点以下第4位四捨五入)